総合型選抜(旧AO入試)とは?対策法&落ちてしまった時の選択肢
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2021年度の大学入試改革で「大学入学共通テスト(以下、共通テスト)」が登場しました。ほかにも大学入試の区分や内容などが変わったことをご存知でしょうか。
このコラムでは「AO入試」から「総合型選抜」に名前を変えた試験区分について、その制度や目的、向いている人、対策方法などをお伝えします。
早めに準備を始めて、納得の行く進路を見つけてください。
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目次
AO入試とは
「AO入試」のAOとは「Admissions Office(アドミッションオフィス:それぞれの学校の入学選考事務局)」の略です。
学校または学部・学科は、期待する人物像を「アドミッションポリシー(受入方針)」として示しています。
AO入試とは、そのアドミッションポリシーにマッチした人物を受け入れるための入試です。
専門学校や私立高校などの入試でも、AO入試の名称が使われています。
文部科学省は2021年度の大学入試改革により、入試区分の名前を次のように変更しました。
2020年度まで | 2021年度以降 |
一般入試 | 一般選抜 |
AO入試 | 総合型選抜 |
推薦入試 | 学校推薦型選抜 |
しかし、私立大学では引き続き、AO入試、自己推薦入試などの名称も使われています。
総合型選抜とは
では、総合型選抜とはどのような入試なのか、詳しく見ていきましょう。
(1)総合型選抜とはどんな制度?目的は?
一般選抜では、学力検査の得点で合否が決まります。
一方、総合型選抜はさまざまな選抜方法により、学習意欲や適性、将来の可能性などを評価する制度です。
学力だけでは測れない個性や能力のある人物の受け入れを目的としています。
総合型選抜では、大学や学部によって求める人物像が異なっていることにも注意しておきましょう。
たとえば国際系学部なら、英語で学ぶ強い意欲を持つ人、海外での多彩な文化経験を持つ人などが求められます。
また、理工系学部では、科学技術や社会の動向に関心を持ってさまざまな面から物事をとらえようとする人、旺盛な好奇心をもつ人などを求めています。
(2)選考方法
旧AO入試では書類審査や面接のみというケースも多くありましたが、入試改革後の選考方法は多様化しています。
志願者本人が記載する書類(活動報告書、入学希望理由書、学修計画書など)の他に、以下のものを少なくともひとつ課すところがほとんどです。
- 小論文
- プレゼンテーション
- ディベート
- 口頭試問
- 実技
- 各教科・科目の試験
- 資格・検定試験の成績
- 大学入学共通テスト
など
(3)選考の流れ
一般選抜の選考の多くは1〜3月に実施されますが、総合型選抜では、9〜11月の実施が多くなっています。
(4)私立・国公立の違い
国公立、私立とも総合型選抜を実施する大学は増加傾向にあります。
共通テストを免除するタイプの総合型選抜も増えています。
私立大学
総合型選抜を実施している私立大学は8割以上。
総合型選抜と学校推薦型選抜を合わせた入学者の割合は55.2%(2022年度入学)です。
平成31年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要:文部科学省
日本で初めてAO入試をとり入れたのは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)(1990年)でした。
2023年度入試でも、総合政策学部と環境情報学部の定員各425名のうち、各150名をAO入試で募集しています。
国公立大学
国公立大学では、約6割が総合型選抜を実施しています。
2023年度入試で実施するのは、104大学、343学部です。
2022年度入試では102大学、335学部の実施でしたので、これからさらに増える可能性があります。
たとえば東北大学法学部では2022年度入試の定員160名のうち、Ⅱ期(共通テストなし)で24名、Ⅲ期(共通テストあり)で24名の計48名を総合型選抜で募集。
総合型選抜は、かなり大きなウエイトを占める入試区分であることがわかります。
総合型選抜を利用するのはどんな人?
次に、出願条件やメリット・デメリットなどから、どんな人が総合型選抜に向いているのかを解説します。
(1)総合型選抜の出願条件
総合型選抜の出願資格は、大学・学部・学科によってさまざまです。
高卒または高卒見込みなどであれば誰でも出願できるところもあれば、高校での成績や資格試験のスコアなどの基準が設けられているところもあります。
高校での成績を見るための指標が「評定平均」です。
関連コラム:総合型選抜(AO入試)で評定は合否に関係する?低くても受かる方法も解説
「高校1年生から高校3年生の出願までに履修していた全科目の評定(5段階)」の平均で表します。
たとえば、青山学院大学の文学部史学科では
- 評定平均が4.0以上である者
- 評定平均が3.8以上、かつ世界史Bもしくは日本史Bの評定が4.5以上である者
といった出願資格を設けています(2023年度)。自己推薦入学者選抜要領 青山学院大学 文学部 史学科
一方、慶應義塾大学SFCの総合政策学部と環境情報学部の出願資格は次のとおりです。
- 高等学校を卒業した者、卒業見込みである者
- 高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると認められる者
- 大学教育を受けるに足る日本語能力もしくは英語能力を有する者
慶応義塾大学 総合政策学部・環境情報学部 募集要領(2022年度実施)
また、明治大学政治経済学部では
- TOEFL iBT 68点以上
- TOEIC [ 4技能]950点以上
- 実用英語技能検定 準1級以上
などの基準を満たすことが出願資格です。明治大学 2023年度 政治経済学部 グローバル型特別入学試験要領
このように、それぞれ出願資格は異なりますので、志望校の募集要項をよく読んで、自分が出願資格を満たしているかを確認しましょう。
(2)総合型選抜のメリット・デメリット
総合型選抜のメリットは、一般選抜よりも早い時期に合格が決まること、学力以外の強みを評価してもらえることなどです。
その反面、学力不足が大学での学びに影響する場合もあることがデメリットとなります。
とくに、医歯薬看護系の学部・学科では、国家試験にそなえて授業が進みます。
その大学で何を学ぶのか、将来自分がどうなりたいのかといった明確なビジョンや目的意識がないと、学びが苦痛になるかもしれません。
どこでもいい、早く合格が決まればいい、という軽い気持ちで総合型選抜に臨むのではなく、自分にあった大学かどうかを十分に考えて受験しましょう。
(3)総合型選抜に向いている人
総合型選抜に向いているのは、次のような人です。
- スポーツ・芸術・科学などの分野で、大会出場や受賞などの実績がある人
- 資格を保持している人
- 志望校での学びに強い意欲がある人
- 志望校の求める人物像にマッチしている人
- 自分の将来像を明確に定めている人
など
総合型選抜の対策
総合型選抜のスケジュールと、時期ごとの対策方法について解説します。
(1)総合型選抜のスケジュール
【6月ごろ】
入試情報が公開されます。
募集要項に目を通し、出願資格や選考基準などを確認しましょう。
【7~8月】
願書の配布が始まり、オープンキャンパスや入試説明会が行われます。
オープンキャンパスや入試説明会への参加を出願の条件にしているところもあります。
条件になっていなくても、できるだけ参加して大学の特徴をつかんでおきましょう。
【9月~】
出願が始まります。
【10月~】
選考が始まります。
面接やプレゼンテーションなどていねいな選考をするため、選考期間は長めに確保されています。
【11月~】
合格発表は11月1日以降です。
年内に合格が決まることが多いですが、共通テスト利用の場合は少し遅くなります。
(2)総合型選抜の対策
1~2年生
自分が何に興味があるのか、何をしているときに充実していると感じるのかなど、自己分析をしておきましょう。
その分析から、自分の未来の姿を思い描いてください。
次に目標を設定します。
将来何を達成したいのか、そのために今するべきことは何か、何を身につける必要があるのかを、順に考えていくとよいでしょう。
たとえば、海外企業と国内企業の取引を助ける弁護士になりたいのなら、英語力が必要です。
そのために、毎日英単語を6個ずつ覚えて、定期テストで90点以上を目指すなど、具体的な目標を決めましょう。
3年生
夏までに、志望校の情報収集と高校の学習内容の総まとめを進めます。
選考に小論文が課される場合は、高校の先生などに添削をお願いしましょう。
面接があるなら、面接練習も大切です。
関連コラム:総合型選抜(旧AO入試)に突破する面接の対策方法
出願書類は余裕をもって早めに準備しておきたいもの。
特に入学希望理由書や活動報告書などは、学校や塾の先生など周りの人にも読んでもらい、意見を聞いて整えましょう。
選考が近くなったら、小論文や筆記試験などを中心に勉強します。
総合型選抜に落ちたら
総合型選抜は出願すれば必ず合格できるわけではなく、残念ながら不合格となる人もいます。
(1)総合型選抜で不合格となる人にありがちなこと
志望校の特色を理解していないと合格は難しくなります。
自分の目標設定を明確にしていない人、自己分析ができていない人も同じです。
何を体験しても楽しさや驚きを感じることがなく、やりたいことを見つけられない人は、面接や希望理由書などで十分なアピールができません。
もちろん、面接や小論文対策が不十分な人も残念な結果となるでしょう。
(2)総合型選抜に落ちたときの選択肢
複数の大学・学部に出願する
「第一志望」であることが出願資格となっている大学や学部もありますが、そうでなければ、複数の大学・学部に出願するとよいでしょう。
一年で複数回出願できる大学なら、再チャレンジも可能です。
一般入試で受験する
多くの受験生は、総合型選抜だけではなく一般入試も視野に入れて準備をしています。
総合型選抜の結果が出るまで何もしていなかった人が、不合格後に慌てて勉強を始めるのでは大変です。
「もしも」に備えて、一般入試対策も一緒に進めておきましょう。
総合型選抜対策に使った時間も、無駄にはなりません。
一般入試で小論文対策が活かせますし、取得した検定は出願資格に使えます。
まとめ
このコラムでは、AO入試に代わって導入された「総合型選抜」について、どんな入試なのか、どんな人に向いているのか、どんな対策をすればいいのかなどをお伝えしました。
大学入試で大切なのは、徹底的な自己分析と明確な目標設定です。
総合型選抜は一般入試と比べると、その点をより重視した入試の制度だといえるでしょう。
自分をしっかりと見つめて十分に情報収集し、満足のいく進路を見つけてくださいね。
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この記事の著者 山口 ちゆき
生物学修士。
学生時代から家庭教師や塾講師のアルバイトを始める。企業の研究職ののち、学習塾に勤務し小中学部理系科目や高校部数学を担当。
これまでの豊富な経験を活かして現在は、教育系WEBライターとして活動中。