会社を買収したいと考えている方は、会社の買収によるメリット・デメリットや、買収後どうなるかが知りたいですよね。

当記事では、企業買収の概要から主な目的、メリット・デメリットを徹底解説しています。

この記事を読めば、経営戦略として、他社を買収すべきかどうか決定ができるようになりますので、ぜひ参考にしてください。

会社買収のメリット、目的とは?

会社買収 メリット 目的

会社買収を行う主な目的や、メリットを解説します。

売上拡大を見込める

会社買収における大きなメリットとして、売上拡大を見込めることが挙げられます。

買収される企業の持つ人材やネットワーク、顧客、技術力などを獲得できるため、大きな売り上げ拡大が可能です。

新規事業参入

新規事業への参入を目的に、会社の買収を実施する企業もあります。

新しい事業の開拓に必要な技術やノウハウを一から獲得しようとすると、多くのコストや人員・時間が必要です。

しかし、現在その業界で活躍している企業を買収できれば、スピーディーに新規事業への参画が可能です。

シナジー効果が期待できる

会社を買収することで、双方の企業のシナジー効果が期待できるケースもあります。

例えば、

  • 強い自社プロダクトを持つが、営業力の低いA社
  • 営業力があり、有力なプロダクトがあればさらなる事業拡大が見込めるB社

上記ケースにおいて、一方の会社をもう一方の会社が買収することで、双方に足りていない要素を補填することが可能です。

これによりシナジーが生まれ、双方の企業の売上・利益向上が期待できます。

人材の獲得

優秀な人材を獲得することも、会社買収の目的の一つです。

日本の少子高齢化に伴い、生産年齢人口は1995年をピークに、減少傾向にあります。

※出典:総務省|令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少

このような状況下では大企業であっても、優秀な人材確保に苦戦を強いられるでしょう。

会社の買収を実施すれば、買収した企業にいる優秀な人材を獲得できるため、豊富なリソースを取得したい場合の有力な選択肢となります。

技術力アップ

会社を買収することで、その会社がもつ人材に加え、技術やノウハウ、豊富な経験を獲得できます。

同業種の会社を買収すれば、技術力のアップが期待できます。

バリューチェーンの強化

会社の買収により、バリューチェーンを強化することも可能です。

製品の製造に際し、原材料の調達や製品加工・出荷業務のスキルが無いため、外部に委託しているという会社も多いでしょう。

これらのスキルを持つ会社を買収すれば、バリューチェーンを強化でき、利益率向上が見込めます。

コスト削減

会社を買収することで、コスト削減が実現する可能性もあります。

例えば、企業間で業務・部門を統一することで、以下のようなコスト削減が実現可能です。

統一内容コスト削減内容
ITツール・システムITツール・システムのランニングコスト削減
仕入れルート仕入れコストの削減
配送ルート出荷・物流コストの削減
製造ライン製造コストの削減
間接部門間接労務コストの削減

会社買収のデメリット、注意点とは?

会社買収 デメリット 注意点

続いて、会社買収のデメリット・注意点を解説します。

取引先や従業員との関係悪化の可能性がある

会社の買収時における経営統合プロセス(PMI)に失敗すると、取引先や従業員との関係が悪化するケースがあります。

会社の買収により経営方針に大きな変更を伴う場合、従業員がストレスや不満を感じ、関係悪化や離職につながる可能性があります。

従業員が離職した場合、取引先が不安を感じ、離れてしまうこともあるでしょう。

これらを回避するためにも、取引先や従業員に十分な説明を実施し、会社の買収について理解してもらうことが必要不可欠です。

統合にコストがかかる

経営統合プロセスには、多大なコストと労力を要します。

会社の買収後は、組織や人員の再配置、ITツール・システム統合、人事制度の見直しなどが必要です。

これらを管轄・担当する部門での統合で、大きなコストや労力が必要となります。

企業統合プロセスまでコンサルティングしてもらえるM&A仲介会社やFAも存在するため、統合が不安な場合はこれらをサポートしてもらえる業者に依頼しましょう。

のれんの減損リスクを負う

のれんとは、企業が持つ顧客や仕入・出荷ルート、技術・スキル・ノウハウなど、目に見えない無形資産を指します。

しかし買収後に、のれんの資産価値分の利益が上がらない場合、減損処理(資産価値を減少させる会計処理)が必要です。

のれんの減損は、決算時に損失額として計上しなければならないため、注意しておきましょう。

簿外債務・偶発債務を承継する可能性がある

会社買収前のDD(デューデリジェンス:買収監査)を丁寧に実施していない場合、簿外債務や偶発債務まで継承してしまう恐れがあります。

買収監査の際は専門家に依頼して、簿外債務・偶発債務を洗い出し、リスクを把握しておきましょう。

会社買収の相場、価格、値段!いくらで買収になる?

会社買収 いくら

会社買収の相場は、対象企業の業種や資産や負債の状況により異なりますが、中小企業のM&Aで一般的な買収価格は以下のようなケースが多いです。

「純資産(時価)+営業利益2年〜5年分」

仮に、以下の純資産・営業利益を持つ企業があるとします。

  • 純資産(時価):2,000万円
  • 営業利益:1,000万円

この企業において「3年分の営業利益」で算出する場合、「2,000万円 + 1,000万円 × 3年分 = 5,000万円」となり、買収金額は5,000万円です。

また、会社の価格を左右する要素として、以下のようなものが挙げられます。

  • 業種
  • 事業規模
  • 取引先
  • 従業員
  • 競合の有無
  • 買収後のキャッシュフロー

業種や事業規模はもちろん、取引先の多さや、優秀な従業員・人材の有無も大切な要素です。

また競合が少ない場合、マーケットを独占できる可能性が高く、売却価格が上昇する可能性があります。

会社買収後はどうなる?

会社買収後はどうなる

会社が買収された後の社長や経営陣、従業員について気になる方も多いでしょう。

また、取引先の継続や株価への影響度も心配になりますよね。

それぞれのポイントについて、詳しく解説します。

買い手企業経営陣が経営方針の決定を担う

一般的に、買収された会社の経営方針は、買い手企業経営陣が決定します。

買収された企業の社長や経営者・役員は、退任する場合やそのまま残るケースなど、様々なパターンがあります。

経営者・役員の待遇は買い手・売り手企業同士のトップ面談時に話し合い、双方が納得できる待遇にしておくことが必要です。

従業員は引き継ぐケースが多い

会社の買収後も、一般的に従業員の雇用は引き継がれます。

会社の売却を検討する企業において、「後継者不足の解消」のためにM&Aを実施するケースがあります。

友好的買収の場合は「従業員の雇用継続」が絶対条件となるケースが大半です。

取引先は変わる場合もある

会社の買収によって、取引先が変わるケースもあります。

一般的に取引先は引き継がれますが、買収する会社が取引先に事前の説明を十分行っていない場合、不信感を感じ取引停止に繋がる恐れがあります。

このようなケースを防ぐためにも、買収する会社へ、取引先への十分な説明を依頼しておきましょう。

株価が上下する可能性もある

会社の買収が、株価に与える影響は少なくありません。

一般的に、買収する会社に大きな魅力があり、売上や利益率アップが見込める場合には、株価が上昇します。

しかし、評判の悪い会社や、売上アップが見込めない会社を買収する場合、単に負債が増えるとみなされ、株価は下落するでしょう。

株主に対し、会社を買収する背景やメリット、懸念点における対策を十分に説明することで、株価の下落リスクを下げることが可能です。

会社買収の方法は?手法の種類を解説

会社買収 方法 手法

続いて、会社買収の方法や、手法の種類を解説します。多くのM&Aは以下の2通りの手法が用いられます。

株式取得

株式取得の特徴や、メリット・デメリットは以下の通りです。

特徴売り手企業の株式を買い手が取得し、経営権を取得する。
メリットスムーズに経営権を取得できる。
デメリット簿外負債を引継ぐ可能性がある。

株式取得は、その名の通り過半数以上の株式を譲受し、経営権を取得する手法です。

スムーズに経営権を取得できるというメリットがありますが、売り手企業の資産負債全てを引き継ぐことになり、その中には事前のDDで発見できなかった簿外負債等のマイナス要素も引き継ぐ可能性もあります。

事業譲渡

事業譲渡の特徴や、メリット・デメリットは以下の通りです。

特徴会社の一部、または複数の事業を買収する。
メリット自社の欲しい事業・資産・負債のみを買収できる。
デメリット契約を引き継ぐ際には、個別の契約ごとに相手方の同意が必要となる。

事業譲渡は、会社の一部、または複数の事業を買収する手法です。

自社の欲しい事業のみを買収できるというメリットがありますが、原則として、譲渡される事業に付随する契約関係については相手側の同意が必要となります。

その最たるものが従業員との雇用関係であり、従業員を含め引継ぎができるよう交渉し、新たに雇用契約を結び直す必要があります。

会社買収のやり方、流れ!手順は?

会社買収 やり方 流れ 手順

ここからは、会社買収の流れについて、ステップ別に詳しくご紹介します。

会社の買収やM&Aには、非常に多くの専門知識を要するため、M&A仲介会社やFAと契約することが一般的です。

当記事においても、専門会社と契約して会社の買収を進める前提で、解説します。

STEP1:初期相談

まずはM&A仲介会社やFAとの初期面談を行います。

初期面談では、自社が買収を希望する企業の業種や条件などについて、相談します。

M&Aを実施する際のアドバイザーとして、M&A仲介会社やFAのほかに、金融機関や会計事務所や税理士事務所が兼業として行っているケースがあります。

M&Aの仲介を専門で実施している企業の場合は、M&Aの取扱件数が多く、知見も深い傾向があります。

また専門業者は、中小企業のネットワークに強みを持つケースが多く、中小企業の売買には特におすすめです。

STEP2:仲介契約(アドバイザリー契約)

続いて、M&A仲介会社・FAとの仲介契約・アドバイザリー契約を行います。この契約は、M&A業務を委託する際に締結する契約です。

仲介契約とアドバイザリー契約には、以下の違いがあります。

  • 仲介契約:M&A仲介会社が主に行う契約。買収側・売却側の双方と契約し、それぞれの意見を仲介しつつ、M&Aを成立させる
  • アドバイザリー契約:FAが主に行う契約。買収側・売却側のいずれかと契約し、契約した企業の利益を最大化するよう、M&Aの条件交渉を行う

仲介契約は、条件面で妥協しなければならない可能性が高くなりますが、双方の落としどころが見つかりやすいというメリットがあります。

一方でアドバイザリー契約は、自社が望む利益が得られる可能性が高い一方で、条件交渉が長引き、破断してしまうケースがある点に注意が必要です。

仲介契約を実施したのち、詳細な条件のヒアリングや、買収対象企業の紹介・提案が実施されます。

また、仲介契約時に着手金が必要な企業や、月額報酬が発生する企業もあるため、手数料の有無は事前に確認しておきましょう。

STEP3:トップ面談

紹介された企業と、自社のトップ同士で面談を実施します。

ここでは、買収される会社の詳細についてのヒアリングが行われます。

買い手企業は、売り手企業の企業概要書等を確認し、不明点があれば質問しましょう。

トップ面談ののち、会社を買収する方針がたった場合、売り手企業に対して会社買収の意向を示す「意向表明書」を提示します。

STEP4:基本合意

会社の買収方針について、双方が納得した場合、基本合意契約を行います。

基本合意について、法的拘束力はなく、あくまで双方が合意したという証明です。

また、基本合意契約時に、仲介会社に対する中間報酬の支払いが発生するケースもあります。

STEP5:買収監査(デューデリジェンス)

会社を買収する方針が決まれば、買収監査(デューデリジェンス)を実施します。

デューデリジェンスとは、売り手企業の財務や税務、法律面などについて、専門家を起用して行う調査です。

買収対象の会社に、簿外債務や偶発債務が無いかについて、専門業者によって徹底的に調査を行います。

仲介会社によっては、デューデリジェンスまで実施してもらえるケースがあるため、契約内容を事前に確認しておきましょう。

デューデリジェンスの結果は、最終条件交渉に使用するため、調査結果は漏れなく確認しておくことが求められます。

STEP6:最終契約

デューデリジェンスの結果を踏まえ、改めて条件交渉を行ったのち、最終契約を締結します。

最終契約の締結は法的拘束力を持ち、締結後に条件の変更はできません。条件面を改めて見直し、問題ないかについてしっかりと検討しましょう。

STEP7:クロージング

最終契約を締結したら、

契約内容に基づき、売り手企業は株式や事業の譲渡、資産の引き渡しや名義変更を、買い手企業は買収金額の支払いを行います。

また、企業統合プロセスや、取引先・外部への情報開示をスムーズに実施することも必要です。

会社買収に必要な費用

会社買収 費用

続いて、会社買収に必要な費用をご紹介します。

買収資金

会社の買収には、当然買収資金が必要となります。

中小企業のM&Aにおいて一般的な買収価格は「純資産(時価)+営業利益2年〜5年分」となるケースが多いといわれています。

最終契約後に金額の変更はできないため、面談やデューデリジェンスの内容を踏まえ、しっかりと検討しましょう。

デューデリジェンス費用

会社の買収に際してする詳細な調査を必要となります。これをデューデリジェンスと言いますが、自社のみで実施することは難易度が高いといえます。

デューデリジェンスは高い専門知識を要するため、専門の業者に作業を依頼する必要があります。

専門家を起用するため、彼らに対して支払う費用がかかります。

仲介会社の手数料

会社の買収にて相談するM&A仲介会社や、FAへの手数料・報酬なども必要です。

仲介会社で発生する主な手数料は、以下の通りです。

  • 相談料
  • 着手金
  • 中間報酬
  • 月額報酬
  • 成功報酬

また、それぞれの費用の概要や相場は、以下の通りです。

相談料

概要:仲介会社への正式依頼前の相談段階で発生する費用

相場:無料〜1万円

着手金

概要:仲介会社とアドバイザリー契約を締結する段階で発生する費用

相場:無料〜200万円程度

中間金

概要:基本合意が成立した段階で発生する費用

相場:無料〜成功報酬の10〜20% 程度

DD(デューデリジェンス)費用

概要:売り手会社の買収監査を実行するために買い手候補が支払う調査のための費用

相場:無料~1000万円程度

月額報酬

概要:アドバイザリー契約の締結からM&A成約までの月額報酬

相場:無料〜月額50万円

成功報酬

概要:M&Aが成約した段階で発生する費用

相場:買収金額の5% 程度

M&Aで必要な費用・手数料の詳細について知りたい方は、以下の記事をご確認ください。

M&Aの仲介手数料・費用はいくら?相場やレーマン方式についても解説

税金

株式譲渡や事業譲渡を実施する場合、税金が課されます。

株式譲渡の場合、株式の譲渡所得に対して、15.315%の所得税と5%の住民税が発生します。

一方で事業譲渡の場合、譲渡益に対する法人税(30〜40%ほど)が発生します。

会社買収は個人でもできる?

規模の小さい会社を買収する「スモールM&A」であれば、個人でも可能です。

近年、M&Aマッチングサイトの普及に伴い、数十万円・数百万円程度の金額で、M&Aが可能となっています。

これに伴い、起業の代わりとして、会社や事業を譲受する「スモールM&A」を選択する個人も増えています。

しかし、簿外債務の有無や人材流出のリスクはあるため、これらを回避するためにもM&A仲介会社やFAを活用することがおすすめです。

会社買収成功のポイント

会社買収 成功のポイント

会社の買収を成功させるには、以下のポイントに注意しましょう。

  • どれくらいシナジーが見込めるか
  • 社風や企業文化
  • 従業員や取引先との関係を良好に保てそうか

まず、買収する会社とのシナジーが見込めるかが非常に大切です。

自社の事業とかけ離れており、かつシナジーが見込めない会社の場合、会社を買収しても経営がうまくいかず、失敗してしまう可能性があります。

また、社風や企業文化については統合が必要であり、かけ離れていると文化の違いから、従業員との関係悪化や離職を引き起こす恐れがあります。

これに伴い取引先に不信感を与え、取引を停止させないよう注意が必要です。

まとめ

会社買収とは、会社の株式や事業を買収することを指します。

同業他社の買収を行う場合、売上の拡大や人材・技術・ノウハウが獲得できるというメリットがあります。

異業種の会社を買収する場合、新規事業への参入やシナジー効果の上昇が大きなメリットです。

会社買収の際は、取引先や従業員に十分説明を行い、不信感を与えないよう注意しましょう。

また、会社買収における主なステップは以下の通りです。

  • STEP1:初期相談
  • STEP2:仲介契約(アドバイザリー契約)
  • STEP3:トップ面談
  • STEP4:基本合意
  • STEP5:買収監査(デューデリジェンス)
  • STEP6:最終契約
  • STEP7:クロージング

M&Aの条件交渉やデューデリジェンス、さまざまな契約には非常に多くの専門知識を要します。

法的リスクや簿外債務リスクなどを回避するためにも、M&AのプロであるM&A仲介会社やFAの利用を検討し、会社の買収を成功させましょう。

西村 淳

この記事の監修者

西村 淳

1987年生まれ 関西学院大学出身。大学時代はアメリカンフットボール部に所属。
野村證券に入社。営業部門に配属され、 部門長表彰を複数回 受賞。
中小企業経営者の事業承継問題 や 「心の機微」を熟知する。
その後、在職中に公認会計士試験に合格。会計知識を活かし、大企業向けにM&A アドバイザリー業務( FA 業務)を提供。
複数のプロジェクトに従事した。業務をする中で、中小M&Aの「不公正」に強い疑問を感じ、これを解消するべく退職。
2023年1月に株式会社M&Aバザール を創業。

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