中学生のお子さんが勉強できない、成績がふるわない状態にあると、このままではどんな将来を歩むのだろうか、と保護者の方は不安になってしまうことでしょう。

このコラムでは、まず、勉強ができない中学生の、卒業後の選択肢を紹介します。

▽知りたいことから読む場合はこちら
勉強ができない中学生の進路の選択肢とは?▶ 勉強ができるようになるメリットとは?▶ 勉強ができない原因とは?▶ 勉強ができるようになる方法とは?▶

また、勉強ができない理由や、勉強できるようにするための方法についても考えます。

お子さんのために、保護者にできることを見つけましょう。

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勉強ができない中学生の進路の選択肢4つ

勉強ができない、つまり成績が良くない場合、中学卒業後の主な選択肢は次の4つです。

1. 偏差値が低い高校へ進学する

偏差値の高い高校は、大学進学の可能性も高いため、多くの人が入学を希望します。

受験者数が多くなり、競争が熾烈なため、勉強していないと合格できません。

一方、あまり人気のない偏差値の低い高校なら、成績が悪くても入れます

しかし、偏差値が低い高校には、学習意欲の低い生徒や勉強以外のことに夢中になる生徒も比較的多くいます。

退学率が高かったり、授業が成立しなかったりすることもあり、進学率は低めです。

周囲からの評判もそれほど良いものではないため、就職で不利になることも覚悟する必要があります。

2. 定時制や通信制の高校へ行く

高校には全日制・定時制・通信制の3つがあります。

定時制や通信制では、さまざまな事情を抱えた人を受け入れていますので、中学校での評価(内申書)は重視しておらず、入学試験もそれほど厳しくありません

定時制高校は、全日制と同様に毎日通学します。

特徴は授業が行われる時間帯です。

多くの定時制では、授業は夜間(たとえば、午後5時〜9時くらい)に行われます。

1日の授業数は4時間で、全日制よりも短いため、高校卒業まで4年かかるカリキュラムとなることがほとんどです。

高校によっては、朝、あるいは朝と昼に授業をする場合もあります。

入学者は全日制ほど多くないため、比較的手厚い指導が受けられます。

定時制の多くは公立の学校で、費用はあまりかかりません

通信制高校は、通学ではなく自宅での学習を基本としており、レポートを提出し、試験を受けて単位を取ります。

ただし、年に数日のスクーリング(学校に行って直接指導を受ける)が必須です。

通常は3年で卒業できます。

公立と私立があり、公立の方が学費は安くなっています。

しかし、独学で学ぶ通信制のやり方では、モチベーションを維持するのが難しく、卒業できないケースも多くあります。

通信制高校の難点を補うためにあるのが、通信制サポート校です。

生徒のモチベーションを維持し、学習や将来の進路を考える手助けをする塾のようなところです。

ただし、サポート校自体は「学校」として認められてはいないため、通信制高校に入学して、サポート校を併用することになります。

全日制と同様に通学して授業を受けたり、将来やりたいことを探すためにさまざまなカリキュラム(難関大学への特別コース、メイク、ネイル、プログラミング、e-スポーツなど)を受講したりして学びます。

サポート校の運営母体は予備校や専門学校であることが多く、サポート体制はかなり充実しており、卒業率が高いのが特徴です。

学校や通学の頻度によって費用は変わりますが、年間数十万円かかります。

3. 高卒認定試験を目指す

高校へは行かずに、高卒認定試験を受けて進学や就職を目指す方法もあります。

高卒認定試験は文部科学省が実施する国家試験で、合格すると「高校を卒業したのと同等の学力を持つ」ことを示す「資格」となります。

高卒の学歴にはなりませんが、大学や専門学校への進学や、就職、資格取得の際に活用できる資格です。

参考:高等学校卒業程度認定試験とは:文部科学省

4. 進学せず働く

進学せず、中卒で働くという選択肢もあります。

しかし、将来の選択肢がかなり狭まるのでおすすめはできません

中学卒業後に高校へ進学しない人はおよそ8%ですが、中卒で応募できる正社員の求人は少ないため、フリーターを選ぶ人が多く、生活が安定しません。

出典:文部科学省「令和3年度学校基本調査(確定値)の公表について」 

平成16年の賃金構造基本統計調査を見ると、中卒の平均年収は高卒、大卒と比べて低いことがわかります。

30~34歳男性の平均賃金は、中卒の場合255.7千円。高卒では、267.2千円。大卒だと323.1千円です。

生涯年収で考えると、中卒と大卒では、大きな差になってしまうのです。

出典:平成16年賃金構造基本統計調査(全国結果)の概況

勉強ができるようになることのメリット

勉強ができない場合の選択肢を見てきました。では、勉強ができるようになると、どうなるのでしょうか。

人生の選択肢が増える

勉強ができる人は、自分の希望の進学先を選べます

将来の職業も、たとえば弁護士や医者など、なりたいものを目指すことができます。

勉強のやり方を知っておくと人生で役に立つ

中学生のうちに勉強のやり方を身につければ、この先の人生でも大いに役に立ちます

大人になってからも、仕事のためや家族のために、学ばなければならないことはたくさんあります。

たとえば、もしお子さんに食物アレルギーがあったとしたら、正しい知識を得ておかないと命の危険にさらしてしまうかもしれません。

中学生のときに学び方を身につけておけば、大人になってからもスムーズに学べるのです。

世の中のことがわかる

勉強すると世の中のことがわかって、自分自身が生きやすくなります

たとえば、お金のふやし方を知っている人と知らない人では、生涯で手にできる額が全く変わってきます

人を助けられる強さが身につく

勉強するのは何のためなのかというと、自分と周りの人を幸せにする強さを得るためです。

誰かを助けるために法律を変えたいと思ったら、法律を変えられる地位に就く必要があります。

あるいは、怪我をしたときにどうやって手当をしたらいいのか、生活ができなくなったらどこに頼ればいいのか、そんなことを知っていれば自分と自分の大切な人を助けられるのです。

勉強ができない原因は?

次に、お子さんが今、勉強できない原因は何なのかを考えてみましょう。

勉強していない、やる気がない

単純に、やる気がなく勉強していないせいで、勉強ができないお子さんも多くいます。

なぜやる気が出ないのか、その原因を知ることが大切です。

自宅は落ち着いて勉強できる環境でしょうか。

お子さんには、他に心配なことがあって勉強に集中できないのではないでしょうか。

今、授業でやっている内容がわからないから、授業を聞いても理解できることがなく、面白くないのかもしれません。

あるいは保護者が、お子さんの学ぼうとする気持ちを潰すようなことをしてはいないでしょうか。

たとえば親戚の誰かと成績を比べたり、努力の過程を評価せずにテストの成績だけ見て叱ってはいませんか。

お子さんがやりたいことを理解して、応援していますか。

やる気が出ない原因がわかれば、対処できます

お子さんとしっかり話し合ってみてはいかがでしょうか。

部活などで忙しく時間がない

部活や習い事などに忙しく、勉強の時間を取れないお子さんも少なくありません。

誰にも平等に与えられた時間をどう使うかが、カギです。

授業時間に集中してインプットする、電車に乗っている時間を勉強にあてる、ゲームをする時間を少し減らすなど、時間の使い方を見直しましょう

部活を引退後に、塾を利用して効率よく勉強するなどしてもよいですね。

勉強しているのに成績が伸びない

時間を十分に取って勉強しているのに成績が伸びないという場合、勉強のやり方が間違っている、あるいはそのやり方がお子さんに合っていないのかもしれません。

正しい勉強法については、次の章で詳しく解説します。

勉強ができる中学生になる方法7つ

次に、どうすれば勉強ができるようになるのかを考えてみましょう。

  1. 勉強ができない原因を把握する
  2. 現在の学力を把握する
  3. 小さな(達成しやすい)目標設定をする
  4. 自分に合った勉強法を見つける
  5. 勉強する習慣をつける
  6. 学習環境を整える
  7. 具体的な勉強のやり方を探す

1.勉強ができない原因を把握する

前章で紹介した通り、勉強ができない、あるいはしたくないのには原因があります。

まずは原因を知り、それに合わせた対策をとりましょう

心配事があるなら、まずはその解決を図ることを優先してください。

2.現在の学力を把握する

総合的な成績だけでなく、教科ごとの現在の学力を把握しましょう

理科や社会は単元ごとに理解していく教科なので、今から新しい単元に取り組めば比較的簡単に成績を伸ばせます。

一方、英語と数学は積み上げが必要な教科です。

基本ができていなければその次を理解することが難しくなります。

わかるところまで遡って学習するのが、遠回りなようで近道です。

国語が苦手な場合、読解力不足が他の教科にも影響している可能性があります。

その場合、まずは少しずつ読書をする習慣をつけましょう。

手に入りやすいものや、やさしいものを選んで無理なく読めるようにするとよいでしょう。

学校の図書館を利用したり、新聞のコラムを読んだりするのもおすすめです。

3.小さな(達成しやすい)目標設定をする

大きな目標までの長い道のりを進むと、疲れたり挫折したりしやすいものです。

ぜひ途中に小さな目標を設定し、それをひとつずつクリアする心地よさを感じられるようにしましょう。

たとえば、国語のテストを30点から80点にする、という目標を掲げたとしても、具体的に何からすればいいのかわかりにくいですよね。

そこで、具体的に、漢字の読み書き問題で半分得点できるようにする、1ヶ月に2冊本を読む、などわかりやすく達成できそうな目標を設定します。

目標には具体的な数字を入れて、達成できたかどうかをはっきり判断できるようにしておきましょう。

達成できたら、次の新しい目標を設定し、少しずつ大きな目標へと近づいていきましょう。

4.自分に合った勉強法を見つける

もしもお子さんが、書くだけで時間の大半が取られてしまう、という場合、書かずに済む方法(タブレットを使う、アプリで勉強する、など)をとるだけで効率よく勉強できることがあります。

音楽を流しながらのほうが集中できる、声に出して読むと理解しやすいなど、それぞれにあった勉強法があります。

いろいろと試しながら、お子さんに合った勉強法を見つけてください。

5.勉強する習慣をつける

そもそも勉強時間が取れておらず、勉強の習慣がないお子さんの場合は、まず勉強の習慣付けから始めましょう。

最初は15分、30分といった短時間でOKです。

1日のうち、どこでやってもいいから、とにかく1週間続けることを目指しましょう。

1週間経ったら、できたこととできなかったことを振り返ります。

朝やるのは難しいとか、学校から帰って少し休憩したあとなら取り掛かりやすい、自分の部屋よりリビングのほうがやりやすいなど、傾向が見えてきませんか。

傾向を見つけたら、次の週に活かしてみましょう。

これを繰り返していくと、だんだん勉強の習慣が身についてくるでしょう。

関連コラム:勉強を習慣化させるコツ5つ!中学生・高校生の保護者ができることとは?

6.学習環境を整える

学習環境が整っていないと勉強しにくいものです。

机の周りを整理したり、模様替えをしたりして、学習しやすい環境を作りましょう。

お子さんが勉強している間は家族から話しかけない、といった周りの協力も必要かもしれません。

塾の自習室や図書館などのほうがはかどる場合もあります。

適切な環境を整えましょう。

7.具体的な勉強のやり方を探す

勉強のやり方は人それぞれです。

塾や家庭教師などを利用するのもひとつの方法です。

YouTubeの授業動画や、中学生向けに勉強のやり方を伝える本などからヒントを見つけるのもよいでしょう。

重要なのは、それらの中からお子さんに無理なくできるものを選び、自分なりにアレンジしてやってみることです。

関連コラム:勉強の仕方がわからない中学生に伝えたい基本の勉強法!主要5教科のコツも解説

親ができるのは学習環境を整えること

ここまで、勉強ができない中学生の進路や、勉強できるようになる方法などについて考えてきました。

お子さんの人生を生きるのはお子さん自身ですし、勉強するのもお子さん自身です。

保護者にできることは、学習環境を整えてあげること、お子さんを信じて応援することです。

そのための選択肢として塾や家庭教師、通信教育、そしてコーチングがあります。

お子さんに合った勉強法を見つけるために、まずは一歩、踏み出してみませんか。

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この記事の著者 山口 ちゆき

山口 ちゆき

生物学修士。

学生時代から家庭教師や塾講師のアルバイトを始める。企業の研究職ののち、学習塾に勤務し小中学部理系科目や高校部数学を担当。

これまでの豊富な経験を活かして現在は、教育系WEBライターとして活動中。