「生物基礎や生物って、どこから勉強すればいいんだろう?」「生物なら計算しなくても得点できるって聞いたけれど、本当なの?」と、生物基礎や生物の勉強法に悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

このコラムでは、定期テスト対策から大学受験対策まで、生物基礎・生物とはどんな科目か、どんな勉強をすれば得点できるようになるのかをお伝えします。

共通テストと2次試験の対策の違いについての不安も、解消していきましょう。

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生物の勉強を始める前に知っておくべきこと

おそらく、このコラムを読もうとしている人の多くは、共通テストで生物基礎を選択する予定の文系の人だと思います。

その次に多いのが、共通テストで生物を選択する理系の人です。

そして、その中に、私大や2次試験で生物が必要になる人が少しいます。

文系の人と、2次試験にも生物が必要な理系の人とでは、勉強のやり方が少し違ってきます。

しかし、同じ「生物」を学ぶ人たちに知っておいてほしいことをお伝えしましょう。

生物とはどんな科目?

私たちヒトも、地球上に暮らす生物の一種です。

そして、生物である動物や植物を食べ、利用して、生活しています。

生物学とは、自分たちや周りの生物への興味や好奇心から発展してきた学問であり、農学や医学などへもつながっていく学問です。

たとえば「RNAワクチン」がニュースとなったとき、ウイルス、免疫、遺伝など、生物学の知識があれば、その内容が理解できます。

生物学は、身近な疑問の答えとなる学問なのです。

高校で文理にかかわらず履修する「生物基礎」では、中学までに学習した「理科」の内容と関連付けながら、生物や生物現象に関する基礎的な内容を扱います。

「生物」は、「生物基礎」を履修した後に、理系の選択科目として学ぶ高校が多いでしょう。

生物」は「生物基礎」をさらに発展させた内容を扱い、生物や生物現象への関心と探究心を高めて、科学的な自然感を身につけさせることを目的とした科目です。

大学入学共通テスト(以下、共通テスト)での「生物基礎」と「生物」

共通テストの受験者数を見てみましょう。

教科・科目名
令和3年度
(1月16日・17日)
令和3年度
(1月30日・31日)
令和4年度
受験者数 平均点 受験者数 平均点 受験者数 平均点
理科1
物理基礎 19,094 75.10 120 49.82 19,395 60.80
化学基礎 103,074 49.30 301 47.24 100,461 55.46
生物基礎 127,924 58.34 353 45.94 125,498 47.80
地学基礎 44,320 67.04 141 60.78 43,943 70.94
理科2
物理 146,041 62.36 656 53.51 148,585 60.72
化学 182,359 57.59 800 39.28 184,028 47.63
生物 57,878 72.64 283 48.66 58,676 48.81
地学 1,356 46.65 30 43.53 1,350 52.72

出典:独立行政法人 大学入試センター 受験者数・平均点の推移(本試験)令和3年度共通テスト

理科1の受験者数は、生物基礎>化学基礎>地学基礎>物理基礎、の順に多くなっています。

令和3年度と令和4年度の生物基礎の受験者数は約13万人。
平均点は令和3年度、4年度とも、他の基礎科目と比べると低めでした。

理科2の受験者数は、化学>物理>生物>地学の順です。

「生物」の受験者数は約6万人で、最も多い「化学」と比べると、3分の1以下しかいません

令和3年度は平均点が4科目の中で最も高かったものの、令和4年度では難易度が上がり大きく平均点が下がりました。

受験科目としての「生物基礎」「生物」に共通していえる特徴は、

  • 知識を覚える量は、理科の4科目の中で最も多い
  • 計算をする量は、理科の4科目の中で最も少ない

の2つです。

計算の苦手な人が、消極的に「生物基礎」や「生物」を選択する傾向がありますが、計算が全く必要ないというわけではありません

しかも暗記量が膨大であるため、楽な科目ではないことは知っておいてください。 

共通テストの「生物基礎」では、暗記しているだけで解ける問題や、内容を理解していれば解ける問題(知識型)が約半分です。
残りの半分は、グラフや表の読み取り、考察が必要な問題(探究型)となっています。

「生物」では、知識型と探究型の割合は4:6程度と、探究型の割合が少し増えます。
実験データから考察させるだけではなく、仮説の設定や実験の立案なども含まれることに注意しておきましょう。

2次試験で「生物」が必要になる学部は、それほど多くはありません。
生物学に関連した内容を学ぶ、次のような学部が中心になります。

  • 医学部
  • 農学部
  • 理学部の生物学科
  • 看護系
  • 栄養系
  • 工学部のバイオ系

したがって、基本的には受験対策として「生物」の勉強をすることが、大学で学ぶ内容を理解するための基礎知識となります。

生物基礎(基本)の勉強法

暗記の多い「生物基礎」と「生物」の勉強では、基本の理解に十分な時間を割くことが重要です。

そのためには、まず「教科書内容の理解」、次に「基本問題の演習」、そして「入試問題の演習」のステップをふんでいきましょう。

「生物基礎」や「生物」の基本を勉強するには、教科書内容の理解が最重要です。

その次に問題を演習して理解度を確かめ、理解できていないところは復習して知識を定着させていきましょう。

1.教科書内容の理解

暗記するべきことがたくさんある「生物基礎」や「生物」。

最初のステップは、教科書内容の理解です。

単元ごとに、たとえば「自律神経」「ホルモン」「フィードバック」などの単語の意味、また、それらによる体内環境の調整のしくみを総合的に理解していきましょう。

言葉だけではなく、図やグラフ・表とセットで覚えるとよいでしょう。
ノートに自分で絵を描くこともおすすめです。

重要なのは、一連の内容を相互に関連付け、ストーリーで理解していくことです。

2.基本問題の演習

教科書内容を理解し終えたら、基本的な問題を解いていきましょう。

ちょっとした待ち時間や移動中などに、一問一答式の問題集(暗記用フィルター付きの問題集だとなお良い)を開いて暗記を進めるのもよいですね。

基本的な問題演習では、ノートに書きながら進めましょう

問題を解いてみて、わからなかったところや間違ったところがあれば、解説をしっかりと読み込んだり、教科書や参考書に戻ったりして、理解のあいまいな部分を補っていきます。

たとえば、カエルとオタマジャクシと未受精卵の図を見れば「ガードンの核移植実験によって、分化した細胞にも全ての遺伝情報があることが確かめられた」とワンセットで思い出せるようにしていきましょう。

できなかったところは、問題集に印をつけておきます

暗記することが多い科目なので、忘れてしまわないよう定期的に復習することが大切です。

復習のときには、印のあるところを念入りにすると、苦手なところの補強につながります

3.入試問題の演習

最後に、入試問題の演習に取り掛かりましょう。

わからなかったところは解説をしっかり読み、教科書や参考書に戻って復習します。
間違えたところだけではなく、その関連事項も含めて復習していく習慣をつけましょう。

たとえば、呼吸の過程で「クエン酸回路」が出てこなかったら、これだけを確かめて終わりにせず、「解糖系」「クエン酸回路」「電子伝達系」の3段階を、あらためてセットにして理解していきます。

共通テストや志望校の過去問は早めに解いておき、問題の傾向をつかんでから、勉強の計画を立て直していくとよいでしょう。
おすすめの参考書や問題集については、下記で紹介しています。

関連コラム:【高校生物】おすすめ参考書&問題集12選!選び方も解説

定期テスト対策としての生物の勉強法

内申点にもつながるため、受験への大切な準備となるのが定期テスト対策です。

授業をしっかりと聞く

定期テスト対策は、日頃の授業から始まっています。

授業の中で「重要」「おもしろい」と感じたことは、ノートにメモしてください。

実験や観察では「なぜそういえるのか」「なぜこのようになっているのか」などを、十分に考えながら進めましょう。

テスト前は教科書、ノート、配布された資料を中心に復習

定期テストの前には、授業でやったことを中心に復習し、語句の理解、単元全体の理解をしていきます。

問題演習で知識と理解度を確認する

教科書内容の理解ができたら、問題を解いて覚えたことと理解度を確認しましょう。

学校で使っている問題集があれば、試験範囲の問題を解いていきます。

市販の問題集や参考書を使うのであれば、自分の理解度に合わせた、基礎的なものを1冊用意するとよいでしょう。

受験対策としての生物の勉強法

「生物基礎」「生物」の受験対策は、共通テストでのみ必要な人と、2次試験でも必要な人とで、やるべきことが全く違ってきます。

(1)共通テスト対策

参考書や問題集を買いに行くと、「生物基礎・生物」と1冊になっているものも多くあります。

自分が受験に使うのは「生物基礎」なのか「生物」なのか、その違いは何かをまず把握しておくことが大切です。

特に文系の人は、「生物基礎」だけでよいことがほとんどなので、どこまで学習すればよいのかを見極めておいてください。

これまでに解説してきたように、教科書や参考書で基本内容を理解したら、共通テスト用の問題集で演習していきます。

このとき、問題文をきちんと読むクセをつけていきましょう。

全問正解や、難問の回答にこだわる必要はありません。

まずは基本的な問題で失点しないように、知識を定着させていくことがポイントです。

重要な語句については、暗記するだけではなく、どういう内容なのかを説明できる力をつけておきましょう。

グラフや表の読み取り

グラフや表の読み取りは、実生活にもつながる技術となります。

客観的な視点で、何を見ているのかをしっかりと把握することが大切です。

最初はグラフや表を読み取りにくいかもしれませんが、数をこなすことでコツがつかめてきます。

問題演習を重ねて、問題の形式や考え方に慣れていきましょう

探究考察型の問題

探究考察型の問題も、慣れが必要です。

最近の傾向として、実験結果の考察だけではなく、その実験を行うための仮定の設定、検証を問う問題も増えてきています。

2020年の大学入試改革からは特に、論理的な思考力が求められています。

落ち着いて問題文を読み、ここでは何が問われているのか、この結果から何がわかるのかを考える練習をしていきましょう。

(2)私立・2次試験対策

2次試験で「生物」を必要とする人は、医学や農学、生物学など、大学での学びに直接つながっていく可能性が高いといえます。

したがって、表面的な理解だけでは不十分です。深い知識と理解、科学的な視点が、共通テストよりも一層重要になってきます。

「そんな仕組みだったのか!」「そうやって調節しているのか!」という感動や興味が、学びの原動力になります。専門的な図書や映像などから、教科書を超えた知識を取り入れると、大きな刺激になるかもしれません。

こちらの場合も、まずは教科書の内容理解が先です。

次に、問題集でインプットとアウトプットを繰り返しましょう

最近では、思考力や判断力を必要とする問題の重要度が増しています。
データを正確に読み取る力、論理的に考察する力が求められますので、問題演習を繰り返し、これらの力を磨いていってください。

記述問題では、書く練習が必須となります。

繰り返し練習し、時間内に書きあげる訓練をしておきましょう。

自分が書いた文章を自分で見ても、採点者にとって読みやすく書けているか、自分の伝えたいことをきちんと伝えられているかがわかりにくいので、添削を受けることをおすすめします。
学校や塾、家庭教師の先生などに頼めれば一番よいですが、難しい場合は、友人同士で添削し合うのもよいでしょう。

試験は時間との勝負です。
過去問に取り組むときには時間を図り、解ける問題から処理していくようにしましょう。
実際の試験でもうまく時間配分できるよう、練習を重ねてください。

まとめ

生物基礎・生物の勉強法について、定期テスト対策から、共通テスト、2次試験の準備まで、紹介しました。

とにかく暗記が大切な科目です。

教科書の理解、問題演習、そして復習、この繰り返しで知識を定着させ、考察する力を高めていきましょう

自分の体の中や周りで起きていることに興味を持ち、生物のおもしろさを身近に感じていくと、暗記も苦にならなくなるかもしれません。

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この記事の著者 山口 ちゆき

山口 ちゆき

生物学修士。

学生時代から家庭教師や塾講師のアルバイトを始める。企業の研究職ののち、学習塾に勤務し小中学部理系科目や高校部数学を担当。

これまでの豊富な経験を活かして現在は、教育系WEBライターとして活動中。